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池の中の観音様(南町)



 池の中に観音さん?。不思議に思うわのう、誰でも。けんど、それなりに理由がありましてな。
 昔々、藤堂藩の家老に小野次郎左衛門という人がおりました。代々、名張で、先祖を供養しておったが、年をとってしまったもんで、子どもに頼むことにしましたんや。けど、お嫁にいったり、江戸に出たりしていて、末娘しかおりませんでな。この末娘も近々お嫁にいくことになっておったんや。考えた末、彼は娘を部屋によんでこのことを話しました。
「お前には悪いんやが、わしのかわりに先祖を供養してもらえんか。」
 しかし、娘はことわりましてな。嫁ぎ先のことを考えたんでしょう。話しは長く続きましたんやが、嫁ぎ先の家族が許してくれたなら供養するということになりました。それから間もなく、娘は嫁いで義母に小野家の供養のことを話しましたんやが、心配どおり。許してはくれませんでした。
 次郎左衛門は何度も何度もたのみました。すると、義母は彼の先祖を思う気持ちに心をうたれ、とうとう許しましたんや。
 それから、何年もの間、娘は一生懸命供養しましたんやが、年をとっていくにつれ、今までのようにできなくなってな。そこで、娘は先祖の墓のある西方寺の池の中に、永く供養になるよう観音様をたてることにしました。今でも、池の中に観音様は残っておりますわ。
話 稲垣美子さん(明治四十一年生まれ)


●西方寺2008/2/29現在。携帯で撮影。


@西方寺1


A西方寺2


B西方寺/池の中の観音様1


C西方寺/池の中の観音様2


D西方寺/本堂

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