「長者さまの黒門は“ギシッ”となきまする。金があるのでなきまする。」
皮肉っぽく村人は、うたっておったそうな。ところがそんなぜいたくがいつまでも続くわけがない。
「長者さまの黒門は“ギシッ”となきまする。金がないのでなきまする。」
に変わってしもうたんや。
屋敷の近くに大きな蔵があって、村で収穫した米を入れてあった。蔵の跡を通っている坂道は今でも「お蔵坂」と呼ばれ、それに長者さまは「殿様」の名で通り「殿谷」や「殿城」の地名も残っておるんじゃ。昔は裕福な長者さまがおりなさった土地だったので「福々」という地名になったんや。この辺りの山には鵜が住みついたといわれてな。それからこの地方を「鵜山」というようになったそうじゃ。
話・豊永楠男さん(明治二十五年生まれ)
福島てるゑさん(明治三十四年生まれ)
top
|