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岡の坊の釣鐘(黒田)



 お寺を巡って歩くお遍路さんが昔、寺の「岡の坊」へやってきて坊さんに恵みを乞うたそうや。ところが、寺には何もない。
「釣鐘でもよかったら持って行きなはれ」
坊さんがいうと、その人は、吊るしてあった鐘を肩にかついで旅を続けた。
 どこの人で、どこへ行ったか、わからへんけど、大正時代やったか、わしが若いころ、吉野の寺で、ほこりをかぶった釣鐘を見つけたんや。「伊賀国名張郡郷黒田庄」と刻んであってな。たずねてみると、釣鐘を持った旅人が、食べ物を恵んでもらったお礼に、置いていったということやった。
 岡の坊は、勝手神社の東の谷間にあったそうや。今、畑になっとる小高い平地が鐘つき道の跡だそうな。吉野の寺の釣鐘は、伝説として伝わっている岡の坊の釣鐘ではないかと思うんや。
話・石田英生さん(明治三十一年生まれ)


●勝手神社2008/8/19現在。携帯で撮影。名張市黒田


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