back

赤岩さんと千方将軍(滝之原)



 滝之原の滝水商店の辻に、赤岩神社へ道案内する大きな標柱石があるんじゃ。ここから南の山へ四キロばかり登って行くとな、比奈知川と長瀬街道が見渡せる岩の上へ出る。左手の方には、天に届かんばかり、頭の上にかぶさった岩山があるんじゃ。これが「赤岩尾」で、赤岩尾神社がまつられ、人々から「赤岩はん」と呼ばれているんや。赤茶けた岩だから赤岩といわれたそうだがの。きれいに節の入った岩が山一面に並んでおって屏風を開いて建てたような「屏風岩」、米俵を積んだような「お俵石」があるんじゃ。それに「小岩尾」という所に「風穴」といわれる洞穴があってな、奥から夏は冷たく冬は暖かい風がいつも吹いておるけれど、昔は直径一メートルほどあってその奥は相当深かったそうやわ。
 平安の昔、高尾の山城にたてこもった藤原千方将軍という武将がおってな。将軍は赤岩にやってきては、武運長久の祈願をしましたんじゃ。それ以来、赤岩は、武運長久の神としてあがめられ、赤岩尾神社の名が広く知れ渡ったのじゃ。
 ある日、千方将軍が祈願にやってきたとき、後をつけてきた敵軍に囲まれてしもうて、もはやこれまでと、もうあきらめた。そのとき、吹く風にさそわれて見つけた風穴に身を隠して難をのがれたこともあったそうな。
 「赤岩はん」へ参る道の脇に小川が流れているんやけど、千方将軍がお参りのたびにこの小川で手を洗い清めたんや。せやでこの川は「千方手洗い川」と呼ばれるようになった。途中に穴尾山という山もありますがの。昔はこの山から石を出しておりましたんや。穴尾山というのは、千方将軍を追って敵がここを通っていると「ドンドン」という太鼓のような音が山に響き渡ったんや。敵は「千方の軍勢が攻めて来た」と思ってな、逃げ出したそうや。なんで音がしたんかというとな、この山には空洞があって、歩くと音がするといわれてるんやわ。それで穴尾山という名がついたそうじゃ。「ドンドラ山」という別の名もついているんや。千方将軍が、乗って来た馬を留めた場所を「お馬留め」、悪人をこらしめるためにつるした大きな松を「人掛け松」というてな、峰にあるんやわ。「恵比寿岩」、「大黒岩」という大きな岩、西には「大滝」という名の滝もあるんや。赤岩から東へ続く高座山にある馬のひづめの跡がついた一・二メートル四方の「千方の飛石」は、千方将軍が赤岩から高尾に戻るときに、馬がその石にのったんで、ひづめの跡がついてしもうたんやと。
 赤岩尾神社のおこもり所でな、村人たちがおこもりしている時、大地震が起きた。そのとき数えきれんぐらいたくさんの岩が落ちてきてな、みんな生きた心地がしなかったそうじゃ。ところが、不思議なことにこの建物には落ちなかった。
 日清、日露戦争や太平洋戦争が起きた頃には、名張やその近辺の人たちだけでなく、県外からもたくさんやって来よった。参道は長い列ができ、若い頃は耐寒祈願いうて、上半身裸で走っておったんじゃ。今でも参拝人の姿をよく見かけますがの。その中には選挙の当選祈願のための立候補者や受験前の合格祈願の人たちもたくさんおるみたいじゃ。
 この山のふもとにはな、「子安地蔵」が祭られてな、子供がお祈りをすると千方将軍のように強い人になって長生きできると伝えられているそうじゃ。
話・山森雄蔵さん(明治三十六年生まれ)
滝永花子さん(昭和二年生まれ)


●赤岩尾神社2008/3/22現在。携帯で撮影。


@赤岩尾神社/R368入り口案内板


A赤岩尾神社/セメント舗装の林道


B赤岩尾神社/セメント舗装の林道


C赤岩尾神社/入り口。林道右側。徒歩10分程度で到着


D赤岩尾神社/一の鳥居


E赤岩尾神社/一の鳥居から。二の鳥居、三の鳥居が見えます


F赤岩尾神社/いくつか鳥居をくぐり、山道を5分程度登ると…


G赤岩尾神社/林が切れ、右手が開けます。


H赤岩尾神社/鳥居


I赤岩尾神社/右手の景色。比奈知ダムが見えます。


J赤岩尾神社/さらに参道は続きます。


K赤岩尾神社/鳥居


L赤岩尾神社/石造りの鳥居


M赤岩尾神社/清めの水。石造りの鳥居手前


N赤岩尾神社/石造りの鳥居


O赤岩尾神社/さらに階段の参道が…


P赤岩尾神社/遂に最後の鳥居と拝殿が…


Q赤岩尾神社/拝殿


R赤岩尾神社/拝殿の背後の大岩に本殿(?)


S赤岩尾神社/拝殿の背後の大岩に本殿(?)


21.赤岩尾神社/風穴伝説のある洞穴の案内


22.赤岩尾神社/道なき道


23.赤岩尾神社/道なき道2 (^ ^;)


24.赤岩尾神社/洞穴の前に鳥居が…


25.赤岩尾神社/伝説の洞穴


26.赤岩尾神社/伝説の洞穴


27.赤岩尾神社/伝説の洞穴


28.赤岩尾神社/帰り道で本殿(?)の背後の大岩を撮影。わかりづらくてスミマセン…


29.赤岩尾神社/入り口Cまで下りてきました。駐車場の隅に山の神


30.赤岩尾神社/山の神


31.血首ケ井戸/R691青山町から


32.千方橋・金/R691青山町(*1)


33.千方橋・風/R691青山町


34.千方橋・穏形/R691青山町


35.千方橋・水/R691青山町

(*1)藤原千方の四鬼(ふじわらのちかたのよんき)。
 三重県白山町などに伝えられる伝説の鬼。
 様々な説があるが、中でも『太平記』第一六巻「日本朝敵事」の記事が最も有名。
 その話によると、平安時代、時の豪族「藤原千方」は、四人の鬼を従えていた。どんな武器も弾き返してしまう堅い体を持つ金鬼(きんき)、強風を繰り出して敵を吹き飛ばす風鬼(ふうき)、如何なる場所でも洪水を起こして敵を溺れさせる水鬼(すいき)、気配を消して敵に奇襲をかける隠形鬼(おんぎょうき。「怨京鬼」と書く事も)である。
 藤原千方はこの四鬼を使って朝廷に反乱を起こすが、藤原千方を討伐しに来た紀朝雄(きのともお)の和歌により、四鬼は退散してしまう。こうして藤原千方は滅ぼされる事になる。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』など

top

back