back

おまんの小餅(下小波田)



 伊勢街道の途中に新田という所がありましてなあ。新田を通って上庄田から険しい七見峠を越え、阿保の羽根に出たんですやわ。そやけど、明治のころになると、阿保と小波田の境にある峠の「姥ケ芝池」通称「ばしば池」ていうんですけど、このばしば池を通るようになったんですわ。これが古い一六五号線ですのやわ。
 なんで街道を通る旅人や道者を新田から、ばしば池の方へ歩かせたのかといいますとな、小波田の旅籠を繁盛さすためでしてんて。
 ほんで、このばしば池のほとりにな、小さな茶店がありましてな。阿保の伊勢路ていうとこの名物「おまんこ餅」を売ってましてんて。
 伊勢路の「おまん」という娘が作ったもんでな、今の「かしわ餅」とよう似ていたもんですねんて。はじめは「おまんの小餅」ていうふうに言われてたんが、どういうわけか「おまんこ餅」になってしもうたんやわ。
 「おまんこ餅」はな、旅人やら道者の人やらに、えろう喜ばれましてな、よう茶店は繁栄しましてんて。ほんでな、道者の人らはこのばしば池のほとりで「おまんこ餅」を食べながら休憩。ここは、あんがい旅の人に人気がありまして小波田も新田と同じように旅籠は繁盛しましてんて。
話・奥ふみさん(大正五年生まれ)

top

back