ある夜のこと、墓近くに住んでいたおじいさんが外に出てみると、お墓の方で火がチラチラと動き回っているのが見えた。おじいさんは、びっくりぎょうてん、腰を抜かさんばかりに、やっとの思いで家にたどりついた。家の人たちに墓の様子を話して聞かせ、次の日みんなと墓へ行ってみたそうや。
するとどうじゃろう。墓は一面に荒されておったそうじゃ。それを見た村人たちは、あちこちの墓を荒して回っている「盗み掘り」の仕わざだとわかったそうな。世の中には何とバチあたりなことをする者がいるものかのう。
それ以後、盗み掘りの持つたいまつなどの火を「ばけの火」と呼ぶようになったそうじゃ。火の玉みたいに見えたから、こんな名前がついたんじゃろうな。
話・中内節さん(大正六年生まれ)
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