「石を持って帰ってどうなさるのじゃ。」
不思議そうにたずねた。
「へい、その石をお伊勢はんとして、毎日おがみますのや。」
「なるほど…。おまえさまが気に入った。石を持って帰りなされ。」
宮司はこころよく承知してくれたので、九兵衛は境内の白い丸い小石を持ち帰ってきましたんや。
その日から、九兵衛は小石を毎日のようにおがんでいたそうやが、ある日、石が持ち帰ってきた時より大きくなっていることに気づいてびっくりした。
「もしかしたらこの石、生きてるんとちゃうやろか。」
九兵衛は首をかしげるばかり。それからも石はな、どんどん大きくなっていったそうな。
今では、その大きくなった石をこの村の勝手神社に納めてあるんやわ。
話・久保義一さん(明治四十一年生まれ)
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