「もうすぐ、年貢を納める時期やというのに……どうしたもんかのう。」
途方に暮れた二人は、あれやこれやと考えました。ふとおばあさんが、
「そうじゃ、あの山の上に願い事のかなう石があるそうな。頼んでみよう。」
二人は山に登って、石の前にひざまづき、両手を合わせて、
「お石さま、お石さま、どうか米がとれるように……お願いいたしますだ。」
一生懸命願い事を唱えはじめました。しばらくしておばあさんが頭を上げると、石がふんわり、ふんわり。宙に浮く石に腰を抜かすほどびっくりして、二人とも体の震えがとまらず、あわてふためいて家へ帰りました。
翌朝、おじいさんが田んぼへ行くと、枯れていたはずの稲が実をつけ、一面黄金色になっていたそうです。不思議な石のおかげということになり、その石は「浮き石」と呼ばれるようになりました。
話 東山よしゑさん(明治三十一年生まれ)
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