もうびっくりぎょうてん。大きな声で叫びながら逃げたんじゃが、岩は勢いがある。あわれにも六兵衛さんは岩の下敷きになってしもうた。
「助けてくれー。助けてくれーっ。」
岩の下から何度も叫びつづけたが助けに来てくれる人もおらず、とうとうその大きな岩の下で死んでしもうたんじゃ。
その後、村の人たちは六兵衛さんの遺体を取りだそうと苦労したがどうしても岩をどけることができなんだそうじゃ。しかたなくそのまま放っておくことにしたそうで、それからはこの大きな岩を村人たちの間では『六兵衛岩』と呼ぶようになった。六兵衛さんの遺骨が今も埋もれていると伝えられておるんじゃ。
話・中内節さん(大正六年生まれ)
|