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ど田んぼさん(夏見)



 夏見に昔「沢」という家があった。五人の兄弟がいてな、三男坊が分家をしたそうじゃ。
 数年がたったある日のこと。分家の娘さんが亡くなったのじゃ。すると驚いたことに沢家を境にして向かって左方の家からは次々と娘さんがなくなり、右方の家からは男の衆が次々と亡くなっていった。こんな不幸が次々と続いたので、この辺りの人々は、たたりではないかと思いこみ、気味悪がっていたそうじゃ。そんな時、ほったらかしの社に気がついてな、人々は、社の神様がおこっているのかもしれないと思ったのじゃろう。それから社を祭るようになった。社の名前を「ど田んぼさん」と名付けたそうじゃ。
 この社の中に大きな岩があって「あびらうんけん」とほられてあった。この言葉は真言宗の本の中にあって「地・水・火・風・空」という意味だそうな。これを祭ることによってあらゆる願いごとがかなえられるということじゃった。
 社にはほかにも四つの長方形の穴があってな。どういう意味で掘ったのかはわからん。穴の下にある三体のお地蔵さまの横に五輪塔の崩れたものが積んであった。これらの五輪等や石の仏さんが掘り出されて社に祭られているのじゃ。
 この社の上手の竹やぶの中がこんもりふくらんでいてな「森の宮」と呼び「森本」の家が多かったことから、この名前がついたんじゃと。
話・夏見のお年寄り

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